漆とは?
ウルシオールを主成分とする天然樹脂塗料である。
最も一般的な用途は塗料として用いることである。
漆を塗られた道具を漆器という。
黒く輝く漆塗りは伝統工芸としてその美しさと強靭さを評価され、食器や高級家具、楽器などに用いられる。
国産漆最大の産地・浄法寺の漆について
和の象徴、漆。
漆は日本人の生活と共にありますがその歴史は古く約9000年前にさかのぼります。
日常の器として、建築材料として、美術工芸の材料として用いられてきました。
しかし原料の漆の生産はわずかとなっています。
日本一の漆産地、岩手県浄法寺は日本産漆の約8割を生産。
一方、日本国内で使われている漆の98%は外国からの輸入に頼っています。
日本の漆は、岩手県、茨城県、新潟県などで生産されていますが、 限られた国産漆の産地のなかで、漆掻き職人が集団として活動し、 まとまった量の漆を生産しているのは日本では浄法寺だけとなっています。
漆は6月中旬から10月中旬までのあいだ、雨の日以外は毎日休みなく採取します。
漆の苗木を植えてから成長するまでに約15年から20年。
そして成長した1本の漆の木からは200グラム程度の漆しか採れません。
半年をかけて牛乳瓶一本分ほどの漆を採りきった後は木を伐採します。それは次の漆の木を生やさせ、次のサイクルに備えるためです。
漆を採る道具は、表皮を削るカマ、横に溝状の傷をつけるカンナ、滲み出てきた漆をすくい取るヘラ、そしてタカッポと呼ばれる漆を集める樽です。
最初に約10箇所、カマで皮をはいだ面にカンナで短く傷を入れます。
これは2回目以降の傷つけの基準点を決めると同時に、木に刺激を与えて漆の分泌を 促すためです。
それ以降は漆を採るための傷を順番につけていきます。
傷を入れるとすぐに乳白色の漆がにじみ出てきます。
これをヘラですくい採り一滴一滴をタカッポに入れるという地道な作業を毎日繰り 返していくのです。
「うるわし」や「うるおし」が語源ともされる漆。
日本では縄文時代早期、約9000年も前から使われてきたように、長い歴史と伝統を 誇り、生活に密着した文化を形成してきた漆ですが、現在は経済的な理由から漆掻き職人が減り、日本で使われている漆の消費量は2%にも満たないのが現状にあります。
しかし、浄法寺漆は、漆芸家はもとより、日光東照宮をはじめとする日光二社一寺や、 岩手の中尊寺金色堂、京都の鹿苑寺金閣などの国宝・重要文化財の修理・修復になくて はならないものとなっています。
日本の環境の中にある建物や漆器などは、 日本の風土で育ったウルシの木から採れた漆こそ最良ではないでしょうか。
蒔絵とは?
蒔絵とは、器の表面に漆で模様を描き、金粉・銀粉などを表面に蒔いて付着させる、日本独得の美術工芸です。
蒔絵の主な技法
平蒔絵 (ひらまきえ) |
漆で文様を描き、金銀粉を蒔いた後に、文様の部分だけに摺り漆をして研磨したもの。器面全体を漆で塗り込めない点が研出蒔絵と異なる。この技法は平安時代後期から現われ、桃山時代の高台寺蒔絵などは平蒔絵が主たる技法となっている。 |
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高蒔絵 (たかまきえ) |
文様部分の漆を盛り上げて浮き彫り状に表現したもの。 |
研出蒔絵 (とぎだしまきえ) |
金粉や銀粉を蒔いた後に、器面全体に漆を塗りかぶせ、乾燥後に木炭で漆を研磨して下の蒔絵層を出す技法。研磨した後には、器の表面は平滑になる。正倉院宝物の金銀鈿荘唐大刀に見られる「末金鏤作」も研出蒔絵である。金銀粉の精製技術が未発達で、粉の粒子が荒かった平安時代までは、この技法が蒔絵の主流であった。 |
肉合蒔絵 (ししあいまきえ) |
高蒔絵と研出蒔絵を合わせた技法。文様の一部を浮き彫り状に盛り上げた上で、器面全体に漆を塗りかぶせ、木炭で研ぎ出す。研出蒔絵と異なり、研磨後、器の表面は平滑にならない。 |
卵殻蒔絵 (らんかくまきえ) |
色漆の中でも白色の漆は、蒔絵 中でも研出蒔絵等で使う場合、乾燥硬度が伴う白さが出せる色漆が現在でも困難で、白色の蒔絵の表現には、代わりとして卵殻の白色を用いる。卵殻(卵のカラ)を割り螺鈿の様に漆面に貼り、金銀粉と共に蒔絵に使う。模様に主として卵殻を多く使う蒔絵を卵殻蒔絵という。卵には、薄く繊細な表現に向いているためウズラの卵の殻をよく使用する。 |
螺鈿蒔絵 (らでんまきえ) |
螺鈿はアワビや夜光貝、白蝶貝などの貝殻の内側にある真珠層を切りだし、模様や図形をにし、表面に埋め込み漆で仕上げる装飾技法。螺鈿蒔絵は、螺鈿と蒔絵の技法を併用したもの。 |